本文へスキップ

二十歳の挑戦の記録

memory

旅行記(7/8):一泊目は氷川丸

 次の日の7月8日、朝早く 誰にも見送られないままに、それまで2年間 住み慣れた町田の街を旅立ちました。結構しっかり準備をしていたので携行品は多かったのです。前後の車輪の上には振り分けのサイドバックと後ろの荷台にも山積みでリュックも背中に背負っていました。やがてすぐに気が付きました。出で立ちがあまりに不格好で体にも負担になってることを。何度か荷物を積み直したり入れ直したりし、行き先の道筋も地図と道路標識を便りながらどうにか走り始めました。この企ては、家族と東京の伯母さんと会社のごく一部の親しい人にしか教えていませんでした。もし途中で挫折しても 誰も知らないまま「自転車と荷物をチッキで送って汽車に乗って帰ればいいさ。」といたって気楽な気持ちで走り出していました。

 空はどんよりと曇り、時折小雨もぱらつき晴の門出とは言えませんでした。エキゾチックな雰囲気を感じる横浜に着き、港が見える丘公園、外人墓地に足を向けて、高台に登って海を展望すると遠く外国が見えるような気分で「赤い靴 はいてた女の子」と口ずさんでみました。

 旅の最初の宿として選んだのは陸に上がった船、ユースホステル氷川丸でした。現在の氷川丸は、横浜の埠頭の観光スポットになっておりますが、当時は船室を宿泊施設として利用したユースホステルでした。さすがに部屋は狭く、2段ベットになっていました。しばらくすると同宿の人が入って来ました。少し緊張しましたが、声を掛けると物静かな大学生さんで安心しました。話が進むうちに 何となく 「私は自転車で日本一周を目指してます。旅の思い出にしたいので何か一言を書いてくれませんか?」と天野さん達から貰ったノートをそっと差し出してみました。そうしたら、快く「結果は二の次。先ず自己を試せ。」と書いて下さいました。その寄せ書きの一言が、その後の私の旅の流れを作ってくれたのです。その日は、揺れない船でぐっすり眠りました。