自転車日本一周の思い出・・・30年前の旅行記録

 思い出はセピア色になっていくけど、いまでも昨日ことののようにフルカラーでよみがえる出来事もある。人生50年を越えてしまった今、ふと振り返ると人生の思い出の半分ぐらいのことと感じる出来事が私にはある。二十歳の時にチャレンジした2ヶ月間の自転車日本一周旅行の思い出である。なんとなく照れくさくて家族にも全容を語ったことはない。まして面倒だったから記録に残そうと思ったこともない。でも、いつも心の中では、すべて吐き出せる機会があるのなら大声で叫ぶように精一杯表現してみたいと思って暮らしてきた。そんな折り、パソコンに出会って十数年たち、インターネットを知った時に、これならあの二十歳のあの時の気持ちを再び体験できると感じた。そこでこれから、あの時のように気の向くままに昔の地図を辿って心の旅に出かけようと思う。(98.11.22)

はじめに

 なぜ自転車で日本一周をしようと思ったか、その経緯を思い出してみる。それはちょうど中学3年の時、所属クラブの陸上の練習もなくなり、そろそろ受験勉強をしなはてはならない時期だった。夜、ラジオを聞きながら机に向かっていると、一人の少年が企てた自転車日本一周旅行をドラマにした番組が流れてきた。聞くとはなしに聞いているうち、毎日その時間が待ち遠しくなり「よし、俺も二十歳になるまでに自転車で日本一周をするぞ!」という気がむらむら沸き上がってきた。そんないい加減な受験勉強だったが、どうにか志望校に受かり3年間を過ごした。母子家庭で家も貧しく大学にゆく余裕などなかったので、家業を継ぐべく卒業後はすぐ東京へ仕事の修行に出た。そして、2年ほど勤めた時、「いま、二十歳のうちにあの思いを遂げなければ一生やる時はないぞ。」という思いにかられて、勤め先に許しを乞い旅立つことになった。自転車は弟が通学に使っていたものをわざわざふるさとから送ってもらった。コッヘル、シート等の野宿の準備品は、お店に出入りの便利屋さんに御徒町から買って貰った。ユースホステルに泊まる時に使用するシーツはお店の女性の誰かに縫って貰った気が する。そして、7月13日、出発の日がやって来た。(99/01/01)


予告編

たった一人の旅だったが、日本中どこへ行ってもすぐに友達が出来た。四国では高知で愛媛の3人の高校生とキャンプする事になった。別れ際、少年達にとらされたポーズが「道路標識の大声大会の写真」として記念に残った。


秋の気配を感じふるさとへの帰路を
急く思いが生じて、能都半島には
入らず横切ろうとしていた。その時、
走る自転車の後ろから声がかかった。
「おにいちゃん、どっちへ行くネン?」
走りながら振り返ると後ろを追尾してくる
サイクリングの少年が目に入った。